大欄蜘蛛 タランチュラ  1966年作 ウルトラQ 第9話 「クモ男爵」より                 ★★
 
 おなじみのタイトル
 
今回は反則である。
これからご紹介するのは、映画ではない。
しかも、内容はクモ。
クモは昆虫ではないのだが、私の中では同じ「虫」の仲間である。

という訳でご容赦いただき、これからご紹介するのは、
「ウルトラQ」第9話「クモ男爵」である。

「ウルトラQ」は1966年に放送されたTV番組で、特撮の神様 円谷英二が監修した、1話完結の30分番組で3ある。
和製「ミステリーゾーン」のような怪奇、幻想をモチーフにした
シリーズだったのだ。

モノクロで気色わるい渦巻き模様のタイトルと、「この30分間、あなたの目はあなたの体を離れ・・・」という石坂浩二のナレーションでも知られている。
 
ショッキングなファーストシークエンスのあとに
タイトル
実は「ウルトラQ」には第22話に「変身」というのがある。

これには昆虫採集やモルフォ蝶が登場し、本昆虫映画館にはこちらの方が
ふさわしいのだが、「バラン」とかぶる部分があるので
「クモ男爵」を選んだのである
 
 途中で一瞬 登場するクモの標本
 子供の頃は、よくクモで遊んだ。

女郎蜘蛛である。
腹に黄色や赤や青といったおどろおどろしい色彩をもつ、
割と大型のクモである。

近くの神社の雑木林に行き、Y字形をした枝でジョロウグモを巣ごと絡め取る。それを友達の採ってきたクモと闘わせるのだ。

ジョロウグモは縄張り意識が強いらしく、咬み合ったりしてかなり激しく闘って、負けた方は逃げていく。勝負がハッキリして面白く、そのころは随分と遊んだように思う。
 
沼を渡るタランチュラ
操演だが登場するのは人間の大人くらいある大きさ。
ひょっとしたらこの沼はミニュチュアかもしれない
 この神社の雑木林は、小学校の隣ということもあって、よく遊んだ。
東側を向いた斜面にあり、アラカシが茂る薄暗い雑木林だったが、
ここでは昆虫だけでなく、色んなものを見た。

夕方の雑木林で激しく抱き合う男女を見たこともあった。
みんなで作った秘密基地に行く途中で、シミーズ(これも死語ですなあ)一枚の若い女の人と出くわし、オバケかと思って飛んで帰ったこともあった。
また、首つり自殺の後始末に出くわしたこともあった。(もっともこれは、その時は何をしているのか分からず、後でそうと知った)
 
東宝の女優はお嬢様タイプが多かったが、
この人は違った魅力である。
特に金星からきた予言者の役は強烈な印象であった。
(映画名は調べてください)
 話がそれてしまった。

「クモ男爵」は典型的な巻き込まれ型ホラー映画のセオリー通りに話が進む。
ところが普通と違うのは、ハリウッドなら1時間半の映画にするところを、こちらは30分で見せているところだ。

濃縮された時間の中で、悲しいクモ男爵の挿話が佐原健二から語られると、グロテスクなはずのタランチュラの化身(でかい。大人くらい)が、なんとなく悲しげに見えてくるから不思議だ。

この巨大なタランチュラの操演も素晴らしい。底なし沼を渡る場面など、どうやって撮ったのか。野外である。フレームの外にヤグラでも組んだとしか思えない。当時全盛期だった円谷プロの実力が現れている。

また、ボンドガールになる前の若林映子も登場し、話に花を添えているのも見所である。